Lapdog Lab

愛犬を中心に遠距離生活(日米)を送るマイペース夫婦が、リモートワークやペットライフなどについてのんびり書きます。

サイロ・エフェクト:イノベーションと飲み会の関係性? [ブックレビュー②]

日々真面目に効率的に仕事をしていても、ふと「なんで今これやってるんだっけ?」と行き詰まりを感じる瞬間はないでしょうか?たまに自分の仕事を振り返ってみることは大切ですよね。やるべきことを再認識できます。

 

ただ組織となると、その振り返りが容易ではないように思います。みんな懸命に取り組んでいて、自分は上手くいるのに事業としてはいまいち成果が上がらないのはなぜか?イノベーションが生まれにくい環境はなぜなのか?

 

今回、この数年で読んだ本の中で、一番ためになったと感じた本のレビューをご紹介したいと思います。私は、この本を読んだことによって、物事を見る視点が少し変わったと思います。

 

『サイロ・エフェクト ― 高度専門化社会の罠』は、文化人類学者の経歴を持ちながらファイナンシャルタイムズで働く著者が、リーマンショック後、「なぜ後になって振り返ればおかしな事が当時は気づかれないままに行われていたのか?」という疑問をきっかけに生まれた本です。

 

著者は、その原因をネットがこれだけ発達した社会で多くのものが繋がっているにも関わらず、組織はサイロ化しているためだと述べています。この現象を著者はサイロ・エフェクトと呼んでいます。

  

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠

 

 

 

 

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 「サイロ」というのは、もともとは、小麦やとうもろこし等の農産物、家畜の飼料を貯蔵するする容器のことで、英語では「窓がなく周囲が見えない部屋」という意味があります。ここから転じて、組織や各業務が“分断化”されていることを指す意味で使われています。

 

高度に複雑化した現代の大企業では、社員は、チームや部署といった自分の所属している小さな単位の利益のために働いていて、会社や組織全体という大きな視点で動くことができなくなり、その結果、組織全体は変化に対応できなくなっていると著者は述べています。

 

著者がサイロ化に気づいたきっかけは金融業界での事件でした。著者は人類学者の視点から、その組織の文化が何故サイロ化を起こし、機能不全を起こすのか?を本の中で様々な企業や団体をケーススタディとして紐解いています。

 

NY 市庁のサイロ化を、どのように当時のブルームバーグ市長がを打ち破ったか?という話から始まり、ソニー、UBS、ロンドン大学、シカゴ警察などでのサイロ化の事例、そしてフェイスブックやとある病院がサイロ化を防止するために行なっている取り組みが記されています。

その一方で、著者はサイロ化が常に悪といっているわけでなく、組織の効率性の上では重要と述べたうえで、サイロ化を利用して成功した例などについても公平な視点で書かれています。

 

著者によると、サイロ化自体は人間が群れを成せば必ず発生するものであると述べています。大抵の人は、まず自分自身や家族、ごくごく親しい仲間たちの考え、そこを起点に最適化しようとします。自分に当てはめても非常に腹落ちしました。

 

そのため、サイロ化は企業だけでなく社会全体にも起こりえます。例えば、Brexit (イギリスの欧州連合(EU)の脱退) がその例ではないかと思います。多くの人は EU 脱退は経済的利点がないためにありえないと考えてましたが、国民は脱退を選びました。これはイギリス国民の多くの人が自身の生活圏内での生活を見渡した時に不満があり、脱退を選んだのかとも考えられます。トランプ大統領登場の背景も同様ではないでしょうか。サイロ化だけが、これらの歴史的な決断の理由とは言えないかもしれませんが、大きな要因の一つではないかと思います。

 

サイロ化を高するための解決策はなんなのか?-著者は、一見時間の無駄と思われることを許容することが必要だと述べています。

 

私の妻は、クリスマスやお正月などの季節のイベントを大切にするよう心掛け始めたといっています。仕事が忙しいときは、季節感も何もあったものではないのですが、忙しいときこそ別のことに目を向けることで、単なるリフレッシュの意味だけでなく、新たなアイディアや問題解決の糸口、仕事のキーパーソンとの出会いがあるかもしれません。

 

私がスタートアップに転職したのも、こうしてブログを書き始めたのも、サイロ化の危険性を大企業の中で感じていたからかもしれません。サイロ化を打破して、常にイノベーションを生み出せる環境に自分自身を置きたいものです。

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